この投稿は、デザイン経営が中小企業やBtoBや製品を持たない事業者では導入しづらい理由が組織構造上にあることについて論じた部分の要約になります。
戦略デザイナー森田昌希のビジネスレビュー
「中小企業におけるデザイン経営の戦略的重要性と新たな要件」の要約⑪になります。
●キーワード
デザイン経営/デザイン経営宣言/中小企業/BtoB/デザイン思考/デザインのアウトソース
●デザイン経営の実践要件
前回の投稿と重複しますが、おさらいしておきます。
- 経営層(意思決定機関)にデザイン責任者がいること
- 事業戦略の最上流からデザインが関与していること
前回の投稿では、中小企業の実情を踏まえると上記の要件を満たす中小企業が極めて少ないこと、そして、デザインに関する意思決定が事業部とアウトソースによって行われていることについて論じました。
実情に寄り沿いながら、どうすれば要件1と2をを満たすことができるのか?このアプローチからデザインのアウトソースそのものを見直し、次回の投稿では中小企業でもデザイン経営を実践できる新たな要件を導きます。
●中小企業に浸透しづらい理由_アウトソース
「経営感覚を持つデザイナーが社内にいない」
「そもそも社内にデザイナーがいない」
リソースを最小限で経営する中小企業では珍しくありません。自然と「デザインは社外にアウトソースする」となります。
重要なのは、誰がアウトソースするか?です。
皆様の会社で考えてみてください。デザインを外注する部門ってどこになりますか?マーケやプロモーションやセールスだと思うのですが、それぞれにデザイン人材を抱えることが難しいので作業として外注している会社が多いのではないでしょうか。
つまり、デザイナーとの接点が各部門にありデザインの意思決定が事業部に落ちてしまっている状態です。
「②事業戦略の最上流からデザインが関与していること」
2つ目の要件がここで大きなポイントになってきます。
デザイン経営で高い競争力を持つためには、事業部の業務的意思決定によるデザインではなく、経営の戦略的意思決定によるデザインを選定することが必要なわけです。
「経営戦略があって、事業戦略が決まり、実行のために必要な成果物(デザイン)を創造(発注)する」という一連のなかで、創造(発注)に経営層が関与する必要性を言っています。
ところが実際の声はどうでしょうか?
経営層「センスに自信がないしデザインの事は分からない。方針を現場に伝えるまでが私たちの仕事だ。」
事業部「忖度なしでターゲットに刺さるデザインを採用したいんだけどなぁ。」
外注先デザイナー「偉い人が出てくると、言っていることが抽象的過ぎてよく分からない。」
全ての中小企業が同じとまでは言いませんが、
軒並み同じようなリアクションではないでしょうか。
では、あるべき姿がどうであるかを先に言うと、
経営層「当社の存在意義(パーパス)を参照したデザインになっているか知りたい。」
事業部「存在意義や理念や方針を理解するだけでなく、ユーザーにとってのバリューと紐づけ言語化して外注先に伝えるのが役割だ。」
外注先デザイナー「言語化されたクライアントの存在意義に寄りそったカッコいいものを納品したい。」
になるような条件を整えてやる必要があるということです。
理想を掲げるのは簡単なので、どうやればあるべき姿に到達するかを論じる必要があります。3者が意思疎通するために何が必要なのか。
●まとめ
経営層と事業部と外注先が、意思の疎通を図るためのツールが必要になってきます。
それがデザイン思考になると私は考えています。
次の投稿では、デザイン思考の必要性と、デザイン思考を実践するための組織的な必要条件について論じていきます。
(続く)中小企業にデザイン経営が浸透しづらい理由~デザイン思考~