企業のパーパス~デザイン経営の起点~

この投稿は、「企業のパーパスとデザイン経営」についての要約です。

戦略デザイナー森田昌希のビジネスレビュー

中小企業におけるデザイン経営の戦略的重要性と新たな要件」の要約③になります。

森田昌希プロフィールついてはこちら

●キーワード

デザイン経営/デザイン思考/パーパス/2人称/西川株式会社/マーケティング2.0/Better by Desing/考えのデザイン/ダイソン/戦略デザイナー


●デザイン経営とパーパスの先行研究

デザイン経営を導入する方法論についての先行研究に触れておきますね。

デザイン経営宣言政策策定委員会の永井さん(2021)によると、

これからのデザイン経営

デザイン経営とは、企業のパーパスを定め、それを起点とした組織文化を構築し、新たな価値を創造し続ける経営手法です

(永井一史『これからのデザイン経営』クロスメディアパブリッシング,p.4.)

また、

パーパスとは、デザイン経営の中心であり組織の指針であるとされているものであり、パーパスを見定め、それを起点とした組織文化を構築し、新たな価値を創造し続ける手法、それがデザイン経営なのです

(永井一史『これからのデザイン経営』クロスメディアパブリッシング,p.65.)

パーパス経営
パーパスとデザイン経営概念図(出所:永井(2021)p.64.より引用)

デザイン経営とパーパスについての先行研究を片っ端から調べましたが、

最もシンプルで分かり易い解説だったのが永井さんの著書でした。

●パーパスって?

ではビジョンや理念とパーパスは何が異なるのでしょうか?

ビジョンや理念は、企業のあるべき姿を企業の目線(1人称)で言語化したもの。

パーパスは、企業が社会に存在する理由や意義を企業と顧客の目線(2人称)で言語化したもの。

共感

この2人称の概念が後述するデザイン思考そのものであり、デザイン経営の源泉であると考えています。

●事例紹介~西川株式会社~

デザイン思考により独自性(ブランド)と新しい市場価値(イノベーション)が創造される一連の活動がパーパス起点になっている事例を紹介します。

西川株式会社

老舗の寝具メーカー西川株式会社は2019年の再統合を機に「よく眠り、よく生きる」というパーパスを掲げました

“寝具を製造して販売する企業”から、外部と提携しながら良質な睡眠を提供して人々の健康を支える “睡眠ソリューションの企業”へと変貌しました。

京都で400年以上の歴史を持つ老舗企業のリブランディングから、新しい市場価値を創造するイノベーションへと繋がったこの成功事例はパーパスが起点となったデザイン経営であることが分かります。

ここで重要なのは、パーパスとは1人称ではなく2人称から成り立つということです。

では、マーケティング2.0などに代表される顧客志向とデザイン経営におけるパーパスの違いってなに?

これを考えるうえで外せないのがデザイン思考というアプローチ方法です。

●デザイン思考

Better by Desingという言葉をご存じですか?

デザイン思考

デザインとは成果物を指すのではなく、

方法論であるとの考え方です。

この方法論がデザイン経営のベースにある

デザイン思考です。

製品は「カタチのデザイン」で、その製品がなぜ必要なのかは「考えのデザイン」とすると、これは製品だけでなく組織や文化も参照します。

どうやって製品をお届けするのか、どうやって製品を製造するのか、

なぜこの製品を創るのか、なぜこの組織が存在しているのか、

ブランドや企業が存在する意義を考えた結果の成果物になります。

パーパス経営

パーパスを起点として、考え(組織文化)とカタチ(価値創造)の両輪をデザイン思考というエンジンで回していきます。

具体的には、アジャイル型の開発スタイルでプロットを多く制作し、考えのデザインとカタチのデザインを行ったりきたりすることが重要と言えるのではないでしょうか。

その代表的なエピソードがダイソンです。

ダイソン
アート思考のものづくり

延岡さん(2015)によると

「筆者が調べた時点で英国本社の650人のエンジニアのうち、約400人がデザインエンジニアであった」

(延岡健太郎(2021)『アート思考のものづくり』日本経済新聞出版、p.86.)

一世風靡した吸引力の衰えない掃除機を世に送り出す前に制作したプロット数は5,000台を超えていると言われています。

“吸引力”という機能以外も追求し続けるBetter by Desingなデザイン思考が、

独自性と新しい市場価値を創造したデザイン経営の成功事例です。


●まとめ_デザイン経営とパーパス

デザイン経営は、その起点となるパーパスを抽出&具体化するところからスタートします。

パーパス経営

デザイン思考により、ステークホルダーとの共感をベースに、

①内で文化を醸成

②外で価値を創造

をアジャイル方式でブラッシュアップしていきます。パーパスが言語化されていくでしょう。

では、全てのベースとなるデザイン思考とは?

私のビジネスレビュー

「中小企業におけるデザイン経営の戦略的重要性と新たな要件」では、

並んで論じられるアート思考デザインドリブンイノベーションなどと比較しながらデザイン思考を論じています。次の投稿では、デザイン思考についての研究結果を要約していきます。

~続く「デザイン思考とデザイン経営」~