この投稿は、デザイン思考と対比的に捉えられるアート思考について論じた部分の要約になります。
戦略デザイナー森田昌希のビジネスレビュー
「中小企業におけるデザイン経営の戦略的重要性と新たな要件」の要約⑥になります。
●キーワード
デザイン経営/アート思考/デザイン思考/VUCA/両利きの経営/イノベーションのジレンマ/連続的イノベーション/破壊的イノベーション
●時代背景
VUCAやコト消費など、経営をとりまく環境が著しく変化したことにより、顧客へ提供する価値の基準が変化したことは要約②で述べました。
デザイン経営がなぜ競争力になるのか?
過去の実績や定量データをベースにした科学的なアプローチや論理的なアプローチでは、皆が同じ解にたどり着くため差別化(競争力)につながらなくなったと言われています(コモディティ化)。
その中で注目を浴びているのがデザイン経営なんですが、
その根底にあるデザイン思考と並べて論じられるアート思考という思考プロセスがあるので簡単にご紹介します。
●アート思考とデザイン思考の違い
その違いは、主に2つあると解釈しました。
- ユーザーとの距離感
- 産み落とすイノベーションの種類
デザイン思考は「You&I」で、Youを観察しますが顕在ニーズを参考にしません。観察するだけで、「 I 」が潜在ニーズを仮説と検証を繰り返すことで浮き彫りにしていくプロセスです。
アート思考は「 I 」でアウトプットを生み出します。ユーザーを観察もしなければ、ユーザー側にあるニーズを考慮しません。我が道を突き進みます。論文ではユーザーとの距離感という言葉でその違いを表現しました。
産み落とすイノベーションの種類について、
- デザイン思考は、連続的(漸進的)イノベーション
- アート思考は、非連続的(破壊的)イノベーションゴール
この点が異なると私は解釈しています。
(※両方とも破壊的イノベーションを生むと唱える研究もあります)
そして、この2つの思考プロセスは何かと対比的に語られることが多いんですね。
しかし、私は以下の視点を忘れないようにしています。それは、
- どちら良い悪いという議論は不要
- どちらが時代に合っているかという議論は不要
それぞれの企業に必要なイノベーションに応じて思考プロセスを採用することが重要です。もし破壊的イノベーションを求めるのであれば、そのプロセスはアート思考を選択すれば良いんです。
余談ですが、連続的イノベーションを深化、非連続的イノベーションを探索と捉えると、デザイン思考とアート思考の使い分けが両利きの経営(O’Reilly Charles A.とTushman Michael L.2016)の実践につながるとも私は考えています。
●アート思考とデザイン経営
延岡氏は、アート思考は顧客や時代に迎合する必要はなく信念や哲学を表現するものづくりであると冒頭で論じています(「アート思考のものづくり」延岡,2021,p.22.)。
ただ、その続きとして、「顧客の経験価値を融合されることで新次元の価値へ昇華させることができる」とも言っています。
アートとアート思考の経済的な違いはここにあると私は解釈しました。
(間違っていたらすいません)
ゆえに、デザイン経営の論文にアート思考のパートを挿入しました。
ユーザーとの距離は遠いけれど、市場に受け入れられることに価値基準を置いている思考方法で、そのアウトプット自体は独自性(ブランド)の確立そのものであると考えたからです。
デザイン経営のベースとなる思考プロセスは複数あり、
その選択肢は企業規模や扱うプロダクトによって異なることが分かってきました。
求めるゴールを明確にする。
そして、そのゴールへのプロセスを選択する。
その道順でデザイン経営の導入を進める必要がありそうです。
~続く「デザイン経営の成功事例」~